決算書の作成 

簿記とは帳簿に記録することだと説明しましたが、実際のところは帳簿に記入するだけでなく、「帳簿に記録し、これを報告する」という一連の手続きを指します。

商店や会社では、通常1年を区切りとして、決算という手続きをおこない、決算書を作成します。
決算書の作成は、法律的に義務付けられているばかりでなく、商店や会社の状況を外部に報告したり、経営者が状況を知るためにも欠かすことが出きません。

簿記とは、”決算書を作成するために、会社に起こるすべての取引を記録する。” といっても言い過ぎではありません。

決算書は、”財務諸表“ともいいますが、おもに「貸借対照表」と「損益計算書」のことを言います。
決算の前に作成する「残高試算表」に基づき作成します。

その事業年度内(会計期間ともいいます)の営業活動の成果、つまり儲けたのか損したのかを「損益計算書」に、そして期末の財産の状態を「貸借対照表」によって示します。

・では、財務諸表を見て行きましょう。

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1)貸借対照表

貸借対照表は、借方(左側)に資産を、貸方(右側)に負債と資本に関わる勘定科目を集めて表示します。

          貸 借 対 照 表
平成××年××月××日
━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━
資  産  の  部   ┃ 負債 および 純資産の部
━━━━━━━┯━━━━━━╋━━━━━━━┯━━━━━━
資   産 │ 金  額 ┃ 負   債 │ 金  額
───────┼──────╂───────┼──────
現   金 │     500┃ 買 掛 金 │    200
当座 預金 │     150┃ 借 入 金 │    150
商   品 │     50┃/      │
売 掛 金 │     100┠───────┼──────
備   品 │     100┃ 純 資 産  │ 金  額
│      ┠───────┼──────
│      ┃ 資 本 金 │    500
│      ┃ 当期純利益 │    50
│      ┃/      │
───────┼──────╂───────┼──────
│     900┃       │    900
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資産]とは、企業が所有する現金や銀行への預貯金・商品・土地建物・備品等の有形の財産や、将来回収する予定の売掛金・貸付金等の無形の債権をいいます。

負債]とは、将来支払わなければならない買掛金、借入金等の債務をいいます。
負債があるということは将来資産が減るということを意味します、よって”マイナスの資産”とも言えます。

純資産]とは、商売または事業を始めた時の出資額(元入れ)分とその後の増加した分です。
資産の総額から負債の総額を差引いた差額ということになり、もちろん多いほうが望ましいものです。
*なお、[純資産]については、2006年の新会社法施行により、[資本]から[純資産]と読み替えることになりました。

図で表示すると以下のように資産・負債・純資産は、3つのボックスを積み重ねた形になります。
そして、左側と右側は”貸借一致”になります。そこで、貸借対照表のことをバランスシート(BalanceSheet)、略してB/S ともいいます。

  (計算式) 資産  = 負債 + 純資産

┌────────┰────────┐
│ (資 産)  ┃ (負 債)  │
│        ┃        │
│        ┠────────┤
│        ┃ (純資産)  │
└────────┸────────┘

また、(計算式) 資産 - 負債 = 純資産   も成り立ちます。

資産が多くても負債も多ければ純資産(資本)は少なくなります。つまり単純に言えば、資産が多くて負債が少ない状態がよい状態といえるでしょうか。

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2)損益計算書

損益計算書も、左側と右側に分けて表示します。そして、左側と右側は”貸借一致”になりますので、以下の計算式と図で表現できます。

  (計算式) 収益 - 費用 = 当期純利益
(マイナスのときは当期純損失と言います。)

 ┌───────┰───────┐ ┌───────┰───────┐
│ (費 用) ┃ (収 益) │ │ (費 用) ┃ (収 益) │
│       ┃       │ │       ┃       │
├───────┨       │ │       ┠───────┤
│(当期純利益)┃       │ │       ┃(当期純損失)│
└───────┸───────┘ └───────┸───────┘

損益計算書は、会計期間内(通常1年間)の営業活動の成果を、借方(左側)に「費用」を、貸方(右側)に「収益」に関わる勘定科目を集めて表示します。(略してP/L;Profit and Loss Statementともいいます。)

      損  益  計  算  書
平成××年××月××日から平成××年××月××日
━━━━━━━━┯━━━━━┳━━━━━━━━┯━━━━━━
費     用 │ 金  額┃収     益 │ 金  額
────────┼─────╂────────┼──────
売 上 原 価 │    300┃売  上  高 │    450
給     料 │    150┃受 取 利 息 │    50
当 期 純利益 │    50┃  /     │
│     ┃ /      │
────────┼─────╂────────┼──────
│    500┃        │    500
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費用]とは、企業の経営活動の結果として収入を得るために費やされたもの。支払った給料や家賃、手数料、利息などをいいます。

収益]とは、企業の経営活動の結果として得た収入です。売上高、受取手数料、受取利息や、固定資産を売却した時の利益などをいいます。
この収益から費用を差し引いたものが”当期純利益“になります。

上記の例では、原価300の商品を450で売上げした 150の利益と、受取利息 50と合わせて 200の利益がありますが、これは必要経費を含めていません。支払った給与 150の必要経費を差し引いて、最終的に 50の利益(当期純利益)があったということになります。

“当期純利益”とは固い言葉ですが、儲け(もうけ)のことです。黒字か赤字かとういうことです。 黒字は当期純利益で、赤字は当期純損失になります。

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・少し堅苦しい話になってしまいました。
入門編ですので、家計におきかえて考えてみましょう。

“わが家のバランスシート”なんていう記事も雑誌などには登場します。
ここで、「貸借対照表」と「損益計算書」を家計におきかえるとどうなるかを考えてみましょう。

・まず、その前に、

家計の中では、”商品売買”が発生しませんのでその記録も必要ありません。
つまり、商売をしていたら、どれだけの商品を仕入れ、いくらで販売し、その販売にかかった経費はどれだけだったか、あるいは商品ごとの売上原価や売上傾向など、また、借入金をはじめとする資金繰りの状況を正確につかんでないと商売を継続することはできません。
家計では、通常これらの商品の仕入・売上をはじめとする”商品売買の取引”がないために、”家計における簿記での記帳”は、きわめてシンプルなものになります。

・「貸借対照表」は期末における財政状態を示す計算書です。家計においても期末(年度末)を決めて作成してはどうでしょうか?

[資産]は、財産のことです。所有する現金・預貯金などの「流動資産」と、土地・建物や自家用車等の「固定資産」が該当します。もしあれば貸付金等の無形の債権があるかもしれません。

[負債]とは、借り入れたもの。つまり返さなければならない借金のことで、住宅ローンなどの借入金が該当しますが、クレジットなども短期の借入金としてはどうでしょうか。

[純資産]とは、資産の総額から負債の総額を差引いた差額ですが、 これが「自己資本」ということになります。
住宅の資産価値が大幅に下がり、一方で、住宅ローンの負債の減少は僅かばかりで、その結果、”いわゆる債務超過”になっているお家もあるかもしれませんね。この場合は純資産はマイナスということになります。

・家計における貸借対照表は以下のような感じになるのでしょうか。
-もちろん架空のデータです。

        わが家のバランススート
平成××年××月××日   (単位:×円)
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資   産 │ 金  額 ┃負債および資本│ 金  額
───────┼──────╂───────┼──────
現   金 │     10┃ 住宅貸付A │    1,500
預 貯 金 │     400┃ 住宅貸付B │     500
土地・建物 │    2,000┃ 自動車ローン│     50
自 動 車 │     90┃ クレジット │     20
│      ┃ 当期純利益 │     430
│      ┃/      │
───────┼──────╂───────┼──────
│    2,500┃       │    2,500
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・「損益計算書」は、一年間の家計の収支を示す「収支計算書」にすればいいでしょう。

簿記では収入のことを[収益]といい、企業の経営活動の結果として得た収入ということになっています。
家計での[収入]は、基本的に給与収入がほとんどそのすべてになると思います。
ほかに預貯金の受取利息、もしあれば投資資金の利益や配当金を含めましょう。

[費用]は、企業の経営活動の結果として収入を得るために費やされた経費ということになりますが、家計においては経費を生活費用のすべてとみなし[支出]として記入しましょう。また、給料天引きされている税金や社会保険・健康保険など、そしてもしあれば支払利息や有価証券売買損も含めてしまいましょう。

・家計における損益計算書は以下のような感じになるのでしょうか。
-もちろん架空のデータです。

     わ が 家 の 収 支 計 算 書
平成××年×月×日から平成××年×月×日 (単位:×円)
━━━━━━━━┯━━━━━┳━━━━━━━━┯━━━━━━
費    用 │ 金  額┃収     益 │ 金  額
────────┼─────╂────────┼──────
食費・外食等 │    150┃ 基本・給与A │    700
衣料・医療費 │     60┃ 特別・給与A │    100
書籍・教育費 │     50┃ 基本・給与B │    140
交際・娯楽費 │     50┃ 臨時収入   │    50
住居・車用費 │    100┃ 利子収入等  │    10
その他 費用 │     50┃      / │
社保・所得税 │    200┃     /  │
他 給与控除 │    30┃    /   │
支払利子   │    80┃   /    │
期末評価損  │    50┃  /     │
当期 純利益 │    180┃ /      │
────────┼─────╂────────┼──────
│   1,000┃        │   1,000
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・簿記では、決算は1年という会計期間を区切りとして、決算書を作成しています。
このルールをワン・イヤー・ルールといいます。

家計においては、基本的には1か月単位の区切りになると思います。 そして、1年間という区切りでの資料作成も必要だと思います。

以上から、家計簿の計算式は以下のように考えればどうでしょうか。

  ┌───────────────────────────────┐
│ 月間収入 - 月間支出 = 資産の月間増減 -負債の月間増減 │
└───────────────────────────────┘

┌───────┰───────┐ ┌───────┰───────┐
│ (支 出) ┃ (収 入) │ │ (資 産) ┃ (負 債) │
│       ┃       │ │       ┃       │
│       ┃       │ │       ┃       │
├───────┨       │ │       ┠───────┤
│ (純利益) ┃       │ │       ┃ (純利益) │
│       ┃       │ │       ┃       │
└───────┸───────┘ └───────┸───────┘

つまり、給与収入から始まり、日々の家計の支出とその他の収入の結果が、現金および預貯金等の資産の増減額と同じになります。
買い物をした分、財布の中味が少なくなります(支出の増加と資産の減少)。
例えば、クレジットで洋服を買った場合は、支出の増加額と負債であるクレジットの残高の増加が一致するということになります。
また、銀行からローンの借入れで現金が増加した場合は、現金という資産が増え、同様に負債の残高(銀行への借入残高)が増えるということになります。

・家計簿に置き換えて財務諸表を説明しましたが、このように複式簿記で家計簿を作成することも可能です。 簿記の勉強を通じて、家計簿をあらためてご自分で作られてはどうでしょうか。

 

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決算書(財務諸表)と”簿記の要素”について説明してきました。

ぜひ、この資産・負債・資本・収益・費用の5つの要素とその関係について把握してください。これこそが簿記の中心的な考え方なのです。

 (簿記の5つの要素と財務諸表の構成)

損益計算書(P/L)         貸借対照表(B/S)

┌───────┰───────┐ ┌───────┰───────┐
│ (費 用) ┃ (収 益) │ │ (資 産) ┃ (負 債) │
│       ┃       │ │       ┃       │
│       ┃       │ │       ┠───────┤
│       ┃       │ │       ┃ (資 本) │
│       ┃       │ │       ┃       │
├───────┨       │ └───────┸───────┘
│(当期純利益)┃       │
└───────┸───────┘